私、代表の阿部のPR歴27年の中での一番の失敗事例をお伝えいたします。
あれは2015年位だったでしょうか。前に勤めていたPR会社の先輩と久々にお会いし、銀座のコリドー街で一杯やっている時でした。20時頃、私の携帯電話に地方のお客様から電話が入りました。
「弊社のサーバーが不正アクセスを受けまして、個人情報が十数万件漏洩した可能性があります!」とのことでした。
酔いが一気に冷めました。一緒に飲んでいた先輩には事情を説明して謝って解散し、すでに帰宅していた2名のスタッフに電話をして急遽会社に集まってもらい、3人で対策を立てました。
ちなみに、よく「不正アクセスで個人情報が漏洩か」というニュースを見ますが、これは不正アクセスの被害にあって、個人情報が盗まれた可能性があるというものです。
不正アクセスにあった企業は被害者になるのですが、ガードが甘いから個人情報が盗まれた可能性があるということで、個人情報を預けていただいた方に謝るというものです。
サーバーにアクセスされた形跡はわかるそうですが、個人情報が盗まれたかどうかはわからないケースもあるようです。
会社のスタッフと3人で過去の「不正アクセスによる個人情報の漏洩」に関するニュースを調べてみると、朝日新聞や読売新聞などには出ているのですが、どれも小さい記事でテレビ番組などでは放送されておりませんでした。
安心した私たちはお客様にお電話し「不正アクセスによる個人情報の漏洩は、そこまでニュース性が高くないので、いつもプレスリリースを配布している地元の県政記者クラブでプレスリリースを配布すれば良いですよ。」とお話しました。
3日後位に、お客様から電話で「プレスリリースがまとまりましたので、明日、記者クラブでプレスリリースを配布したいと思います。」とのご連絡をいただきました。念のため、「私も同行させて下さい。」と言って、翌日、地方の記者クラブにお客様と一緒に行きました。
大体の記者クラブは、プレスリリースを配布する場合、2日前までに申し込みが必要なのですが、そこの記者クラブでは事前の申し込みは不要な記者クラブでした。
いつもの新商品のプレスリリースを配布しているように記者の各デスクをまわり、「プレスリリースです。」と言って、一人一人にプレスリリースを渡していくと、3人目に渡したのがNHKの記者でした。「個人情報の漏洩の可能性か、、、十数万件は多いなぁ。」とつぶやき、5秒ほど考えておりました。その後「あの~、もし可能でしたらレクチャーしてもらえませんでしょうか?」と言われました。同行していたお客様からは「レクチャーとは何ですか?」と聞かれ、私は「説明して欲しいということです。」とお答えし、私から記者には過去の経験から「レクチャー大丈夫ですよ。」とお客様に確認もせず勝手に即答しました。
私の過去の経験では、記者クラブの隅にソファーがあるのですが、記者クラブ内にいる数名の記者にそのソファーに集まってもらい、プレスリリースの内容について説明し、その場で質問を受けるというものでした。その場には、4~5名の記者しかおりませんでしたので、その記者に集まってもらい、すぐに説明するものだと思いました。
すると、そのNHKの記者が「では、記者クラブを出た横にソファーがありますので25分後の14時に声をかけますので、少しお待ちいただいても良いでしょうか?」と言って、携帯電話で記者クラブにいなかった記者に次々と電話をし始めました‥‥‥。
ソファーで待っている時にお客様とは「プレスリリース通りに包み隠さず全てをオープンにして説明しましょう。」などと言って、ソワソワしながら待っておりました。
25分経った時にNHKの記者が呼びに来て、記者クラブの中へ誘導され入って行きました。
ドアを開けた瞬間、テレビカメラが4台、記者が10人位集まっており、机と机の上にはマイクが用意されておりました。そうです、テレビで良く見る謝罪会見のあの風景です。
私たちは、固まりました‥‥‥。
お客様からは「記者会見場みたいになっていますね‥‥‥。最初にお辞儀をした方が良いですか?」と聞かれました。私は「そうですね。メディアの方は、その絵が欲しいですね。」とお返事いたしました。夏だったので、お客様は半そでのワイシャツでした。急遽、私のネクタイとジャケットをお貸しし着てもらいました。
それから、お客様は深々とお辞儀し、質疑応答が始まりました。始まってしまうと私は何もできませんでしたが、お客様は完璧な受け答えをし、謝罪会見は終わりました。
地元の夕方のテレビのトップニュースと翌日の朝刊で私のお客様が深々とお辞儀している様子が出ました。そうなのです、その会社は地元では有名企業で、地元ではビッグニュースなのです。翌日、東京の新聞はベタ記事が少し出て、テレビ番組は1番組に15秒放送された程度でした。
しかしながらニュース性を見誤りました。私の大失敗です。
お客様とは年間契約を結んでいたのですが、そんな大失敗をしたのですから契約を切られると思っておりましたが、なんとお客様は、「その場で謝って、ニュースがすぐに終息して、これで良かったですよ。」と言って、私を責めることなく契約を継続してくれたのです。
後日、PR会社の先輩にこのことをお話し、「いや~、ニュース性を見誤りました。地方では大ニュースだったんですよ。」と言った所、「阿部くん、もし仮に東京だったとしても個人情報が十数万件漏洩した可能性があるんだったら、レクチャーして欲しいって言われると思うよ。」と言われ、再び背筋が凍り付きました。
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執筆者:阿部 重郎(あべ しげお)
広報・PRアドバイザー
お客様をテレビ、新聞、ネットニュースなどのマスコミに無料で取材させる専門家
1972年生まれ。新潟県出身。
PR業界一筋27年。自身が関わった記者発表会は200回以上、執筆したニュースリリースは1,000本以上。
これまでの顧客は、本田技研工業、住友ゴム工業、明治、りそな銀行など500社を超える。
マスコミにお金を支払わずに、ニュースリリース1本で、広告費に置き換えると4億円に値する価値を生み出した経験もある。
新卒で当時業界3位のオズマピーアールに入社。3年後に、当時業界2位の共同ピーアールへ転職。大手PR会社2社で計12年経験を積む。
2007年、「もっと気軽に広報活動を~オモシロイ!をあふれさせよう」をミッションに広報・PRアドバイザーとして独立し、プレイブ株式会社を設立。代表取締役に就任した。